ヒューイットリゾート那覇のロビーには
現代日本画家・大竹寛子さんの
絵画作品「Nature's Spiral」を展示しています。
Natureʼs Spiral作品ステートメント
常に変化してとどまることのない「流れ」は多くの人を惹き付けてやみません。作品タイトルの「螺旋」や「渦巻」は自然界に様々な形で存在しています。植物の形態、花の形、葉や芽の出方などは、太陽の光を効率よく取り込むように進化してきました。その進化の究極の形として、渦や螺旋は私たちに美しさとは何かを教えてくれている様に感じます。基本的には繰り返しの構造でありながら、同じ位置をたどらず無限に上昇する形状はDNAの構造にもみられ、生命力や成長を連想します。
私がモチーフとして扱う蝶や花に重ねるイメージは、常に流動的な現在の瞬間です。幼虫から蛹、蛹から成虫として全く形の異なる蝶になるという完全変態形を持ち、揺らめく様に飛ぶ蝶。蕾から花が咲き、やがて枯れ、種が出来る植物や自然の摂理の中に儚さ、そして強さと美しさを感じます。
流動的で儚いものをあるがままに受け入れ、自然の中にそれを見出し、自然と共存しなが ら精神的な成熟を試みてきたのが日本人のアイデンティティの一部であると感じています。
異なる文化の共生、部分と全体の共生、歴史と現代の共生、そして、無と有とが共生する美意識を解釈し制作していきたいと思っています。
インタビュー INTERVIEW
ロビーを華やかに彩る絵画。横幅4.2mにもおよぶ大作で色とりどりの蝶や花が画面に散りばめられています。今回、当ホテル開業にあたり、現代日本画家・大竹寛子さんに絵画の作成を依頼しました。大竹さんは、国内外での個展・展示のほか、L’ATELIER do Joel RobuchonやSalvatore Ferragamo、渋谷西武デパートの全館プロモーションなど企業コラボレーションなど幅広いアート活動をされている気鋭のアーティスト。ホテルオープンの約1か月前、作品の搬入・設営を無事に終えた大竹さんに、作品や制作活動についてお話をお伺いしました。
01伝統的なものを現代に昇華させたい
日本画と聞くとどこか「渋い」イメージがありますが、大竹さんの絵はその渋いイメージからは大きく異なります。
この違いの源には、固定概念に捕らわれず自分の感じる美しさを追求する大竹さんの考えがありました。「絵画には具象画や抽象画、油絵や水彩画などさまざまなジャンルがあり、その中で日本画は和紙や岩絵具を使ったものをさします。日本画はなんとなく“渋い”ものというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、私は、伝統的なものを現代に昇華し、“そうじゃないものもある”という事を知ってもらえればと思いながら、作品制作に取り組んでいます」。
02質感を楽しむ
「今回の作品も和紙、岩絵具、それに銀箔と日本画ならではの技法を用いています。岩絵具は鉱石を原料とした自然由来の絵具ですが、独特の質感があり、また混ぜる事によって色味が大きく変わるおもしろさがあります。またキャンバスいっぱいに貼った銀箔も、部分的に化学反応を起こし朽ちた風合いを出し、花や蝶の下地として使っています。」
03「Nature’s Spiral(自然の中の渦)」
―流動的瞬間の中にある恒常性―
今回の作品コンセプトは「Nature’s Spiral(自然の中の渦)」。無数の花や蝶が大きな渦を生み出しています。変化し続けるからこそ変わらない大切なものに気づけると大竹さんは考え、この「流動的瞬間の中にある恒常性」は大竹さんのアート活動の一貫したテーマでもあります。「花びらの重なりや葉や芽の出方など、自然界には多くの螺旋・渦があります。これは、太陽の光を効率よく取り込めるようになど長い進化を経てたどり着いた形です。また私たちの体内にあるDNAも螺旋状をしており、私は螺旋・渦という形に神秘を感じるとともに、同じ位置にとどまらず無限に上昇する構造は生命力や成長を感じさせられます。また螺旋と同様、蝶と花も私の好きなモチーフについてですが、どちらも大きく形を変えながら一生を過ごします。蝶は完全変態形であり、卵から幼虫に、さなぎを経て成虫へ。花は種が芽吹き、花を咲かせ、枯れて種となり次の新しい世代へと繋がっていく。螺旋は絶えまない流動性を、花や蝶は流動的な現在の瞬間を象徴とし、不変である本質へのアプローチとなればと思っています。銀箔を硫化させる技法も、物質を変化させるという意味で花や蝶と通じていますね」。
04Find Me!
今回の作品の中にはさまざまな種類の蝶が描かれていますが、その中に沖縄県の蝶である「オオゴマダラ」も描かれています。白地に黒い放射状の筋と斑点がある大きな翅が特徴です。「3つのキャンバスで1つの作品となっていますが、そのキャンバス1枚に1匹ずつオオゴマダラがいます。ぜひ見つけてください」。
05作者メッセージ
「ホテルは、日常を離れて楽しんだり、リフレッシュする場所です。作品はホテルのエントランスに展示されますので、非日常の入り口として沖縄滞在の刺激になればいいなと思っています。また作品の中の渦に気づいてもらえるとなお嬉しいです。渦・花・蝶が象徴する流動性・変化を沖縄の自然・風土の中に見つけ、よりリフレッシュしていただければと思います」。
ARTIST
2006年東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業、2011年同大学大学院美術研究科博士課程日本画研究領域修了、美術研究博士号取得。2014年東京藝術大学 エメラルド賞受賞。2015-2016年文化庁新進芸術家海外派遣制度によりニューヨークに滞在。2019年ローマ教皇来日に伴い、バチカン市国に作品「Psyche」を寄贈。長年研鑽を積んだ日本画の伝統的な技法を基に、箔や岩絵具を用いて新たな表現を展開し、国内外で高く評価されている。
- 2006年
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東京藝術大学絵画科日本画専攻 卒業
卒業制作 帝京大学買い上げ
- 2008年
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東京藝術大学大学院美術研究科日本画専攻 修了
- 2009年
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第19期佐藤国際文化育英財団奨学生(佐藤美術館)
- 2011年
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東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程 日本画研究領域修了
美術研究博士号取得
- 2011-14年
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同大学教育研究助手 日本画
- 2014年
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東京藝術大学 エメラルド賞 受賞
- 2015-16年
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文化庁新進芸術家海外派遣制度(アメリカ・ニューヨーク)
- 2019年
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ローマ教皇来日に伴い、バチカン市国に作品「Psyche」を寄贈
現在長年研鑽を積んだ日本画の伝統的な技法を基に、箔や岩絵具を用いて新たな表現を展開し、国内外で広くアート活動を行っている。